大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所八王子支部 昭和34年(家イ)352号 命令 1960年1月22日

申立人 矢部信三(仮名)

相手方 矢部マチコ(仮名)

主文

相手方矢部マチコは東京都北多摩郡清瀬町○○都営住宅○○号矢部ひさ所有名義にかかる下記株式について当裁判所が別に命令するまで、売買譲渡質入その他の処分をしてはならない。

住友金属工業株式会社は当裁判所が別に命令するまで下記株式について株主名簿上の名義書換その他一切の変更手続をしてはならない。

一、住友金属工業株式会社五〇〇株

但し記番号に已六二八九六

(家事審判官 高根義三郎)

〔昭和三五年五月四日変更〕

申立人 矢部信三(仮名)

相手方 矢部マチコ(仮名)

上記当事者間の当庁昭和三四年(家イ)第三五二号親族間の紛争調停事件について当裁判所が昭和三五年一月二二日した命令を次のとおり変更する。

主文

住友金属工業株式会社は下記株式について矢部ひさの名義書換申請にもとずいて申立人に名義書換手続をせよ。

一、住友金属工業株式会社五〇〇株

但し記番号に已六二八九六

(家事審判官 高根義三郎)

申立の趣旨

申立人の家庭は妻ひさは昭和三十三年四月病死し、長男武吉(昭和二七年六月病死)の家族(嫁マチコ=相手方と孫娘三人)と現在同居中であるが嫁(相手方)との折合が悪いのでよろしく御調停をお願いします。

事件の実状

申立人と相手方との間の葛藤は次のとおりであります。

一、長男武吉(相手方の夫)が静岡県下田で発病(昭和二七年六月一一日に)心臓衰弱で、新宿区若松町国立第一病院で死亡したのでその後相手方と孫娘を引取つて現住所に同居したものである。

二、そして相手方は夫なきあと或る程度の寂しさはあつたと思うが申立人の妻ひさ在世中はまだそれでも一応の未亡人生活をしていたが昭和三三年四月二一日ひさ死亡後急に態度が変つてきた。

三、武吉在世中ひさ名義にして諸会社の株券を購入したものがあつたのだがそれを相手方はボツボツ処理しているようだ。それら株券はその後相手方が事実上の管理保管をしているような形で申立人にその明細は不明だが少くも新日本窒素肥料KK株券約一〇万円(株数不明の自由株らしい)を相手方が処分したことを申立人に忠告した知人があるので判明している。

四、相手方は現在東京都墨田区方面へ毎日出勤しているがその勤務先その他について全然申立人に話をしない(申立人は極度の難聴の事実はあるが)そして何か金が必要とみえて株券その他を処分するらしいが孫娘三人の将来を考えると非常に心痛をすることである。

五、現在ひさ名義の株券中明瞭なのは

住友金属工業KK 五〇〇株

新報国製鉄KK 四〇株

であるが

この現物もひさの箪笥中に見当らぬので、九月一七日に田無警察署へ株券紛失届を出した次第である。

以上のとおりであるのでこの諸株も孫娘の為に有意義に活用するよう相手方の反省を求めるために調停をお願い致します。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例